働いている人が元気で生き続けるような環境を作る

最終更新: 2018年12月3日


株式会社日立製作所社会イノベーション事業推進本部にてエグゼクティブSIBストラテジストを務める渡辺さん。

ジョイワークスでは創業当時から、日立製作所における家庭と仕事を両立するプロジェクトや、株式会社ゴールシステムコンサルティングさんと協力して働き方改革の推進をお手伝いしてきました。毎年海外で行われるTOC(制約理論)の国際カンファレンスなどでもご一緒させていただいている、直接的なビジネス以外でも交流の深いジョイワークス吉田が、独自のマネジメントスタイルをお持ちの渡辺さんにインタビューしました。


株式会社日立製作所/本部長:渡辺 薫氏


チームに成果を出してもらうために試行錯誤をして来た時代

J:私が渡辺さんとのかかわりの中で、最初に大きな衝撃をいだいたのは、Ocapi(ヒューマンバリュー社のチーム力判断ツール)でほぼ満点を出されたことです。あれは驚きでした。今日はそんな渡辺さんの「マネジメント観」をお伺いできればと思っています。手法ではなく、どんなことを大切にされているかを特にお聞きかせいただければ。


W:では、僕が考えている「マネジャーの仕事」って何?ということをお話しますね。


J:はい、お願いします。


W:まず、ドラッカーは「チームに成果を出させること」がマネジメントの仕事ということを言っています。やはりこれがシンプルだけど、いちばん基本的なことだと思います。

自分が成果を出すことと、チームに成果を出させることって、ものすごく違うんだよね。

僕はずっとプレーヤー時代が長くて、マネジャーというポジションになっても「プレイングマネージャー」として、どちらかというとプレーヤーとしての性格が強い仕事をしてて、改めて「マネジャーって何をするの?」と考えたときにものすごく困ったのよ。


J:そうなんですか⁉


W:そのときに「チームに成果を出させるために自分は何をしたら良いんだろう?」ということをわりと一所懸命考えて、模索してきたんですよ。


J:そうでしたか。私はその結果が出ているところから拝見しているのでそんな模索の時代があったのですね?


W:細かく指導して嫌われたこともあるし、あまりにも放ったらかして成果が出なかったこともあるし、結構悩んだ時期があります。

ご存知かもしれないけど、今僕は7回転職して8社目なんです。

いろんなマネジメントスタイルを見てきた。そのなかで、時間をかけ、マネジャーって「何をしなきゃいけないのか」「何をしてはいけないのか」を試行錯誤でやってきた感じです。


絶対やらなきゃいけないのは、「目標が何であるのかをクリアに共有すること」。

これなしにチームに成果を挙げさせることは絶対無理。一方、具体的にどのような行動をするかということについては細かく指示をしすぎては駄目。

実際に見ていると多くのマネジャーはその逆の行動をすることが多いよね。

例えばドキュメントのレビューをする時、「まず作って来い」と指示をして、出来上がったものを細かく添削するマネジャーが多い。

僕が今やっていることは、まずは「目標に対してどういうことが実現できているドキュメントであれば良いか」「それを作成するためにどのような知識が必要であるか」を徹底的に部下と議論します。

その結果、その人がそのドキュメントを作成するにあたって自信を持って取り組んでいるということが見て取れると、あんまり成果物をチェックしたりしないです。


信頼できる部下に任せる場合、中間レビューはするけれど、最終のレビューはしないです。

「出来上がったね?自信あるね?はい、OK!」という感じです。


でもそれ以前にしなければいけないのは、その人がどれだけ自信を持ってそれに取り組めるかの準備を一緒にすること。僕がその人を信じられる状態を作ることが大切。それが不十分だったら心配だからチェックしなきゃいけないことになってしまいます。


こういうことを積み重ねてきて、「マネジャーの仕事ってこういうことだ」というところにたどり着きました。


もうひとつ最近になって思っていることは「部下がその仕事ができると信じること」。

これって難しくて、実は部下は僕と同じような視点では仕事ができない。でも、そのときに考えなければいけないのは「なぜできないのだろう」ということをきちんと考えて、サポートしてあげること。

「おまえは駄目だ!」って言っちゃいけないんです。

「あなたがつまづいているにはなにか理由があるに違いない」「つまづいている理由はあなたの能力不足ではなく、経験もしくは知識が足りないからだ」と見ることなんです。

「その人自身の責任にするのではなく、できない何かしらの外部要因がある」という見方をすることが大切なんです。

つまり、マネジャーの仕事はその人が実現できるように必要な情報を入手可能にしてあげること。可能であれば、自分で教えるのでなく情報を取得する方法を教えてあげること。

基本のガイドライン的なことは僕が教えることが多いけど、その他の情報はなるべく他の人に聞くなどして、自分が情報を集められるようにしてあげるんです。


こういうことをするのがマネジャーの仕事だと、今は思っています。

そして組織全体が目的を共有してそのような状態になっていることを作り上げるのが最終的なマネジメントの姿だと思います。


「マネジャーは人をマネジメントするのか、仕事をマネジメントするのか」ということをずっと考えていたんだけど、僕は「人に対してコミュニケーションを取ることで仕事をマネジメントしている」と思っています。


(一同うなずく。)


これも逆の人がいるよね(笑)


J:逆の人はとても多いですよね(笑)

ここ、重要ですよね。


W:マネジメントとはこのようなことだと僕は思っています。


マネジャーの評価軸

J:渡辺さんとお話をしていると「成長のためには人に失敗させる」という事がよく出てきますが、マネジャー育成という観点で、「こんな事を経験させるといいよ」ということなどあったらお聞かせいただきたいのですが。


W:通常、企業は「成果を評価する」という考えだと思います。

考えたいのは「マネジャーとそのチームが出した成果を評価することが良いことなのでしょうか?」ということ。


マネジャーを評価する際に「成果」だけで評価するというのはちょっと疑問で、「マネジャーがチームに成果を出させるという行動をとった結果として出た成果か?」ということを評価しないといけない。

別の言葉でいうと「あなたが成果を出したこの仕事で、あなたの部下はどれだけ育ったの?」

そのような評価のヒエラルキーが必要なんじゃないかなと思います。


そんなことを踏まえて、マネジャー育成を考えると、まずは「部下の仕事に口を出さない」ということを経験させると良いのではないかと思います。「いっぱい不満はあるだろう、でもとりあえず黙ってみてみて」という感じです。

そうしないで部下に細かく仕事を教えてしまうと、「その部下がなぜ仕事ができないのか?」「どこで行き詰まっているのか?」がわからないから。そうすると永遠に教え続けることになる。

なので、「一定期間、口を出さずにちゃんと見ている」ということを経験してみることが大切だと思います。


J:なるほど。まずは、原因を発見するための観察が必要なのですね。やたらと最初から手や口を出さずに、失敗も許容していく姿勢は、とても渡辺さんらしい感じがします。


大きく影響を受けた二人の人物

J:渡辺さんは、公私別け隔てなく人付き合いがとてもフラットでいらして、皆さん気軽にお付き合いできる雰囲気を作っていらっしゃいますが、昔からそういう人付き合いをされてきたんですか?


W:基本的な姿勢はそうです。前から変わっていません。

僕がいることによって、周りの人の学びが深まったり、ハッピーになるとか、役に立ったと思われる、そういう存在でありたいということは結構意識しています。

だから気軽なまでも自分を律しているところはあります。


J:そんな渡辺さん自身が「こんな人って良いな」と思い描く有名人などはいらっしゃいますか?


W:ビジネスマンとしてラッキーだったのは、最初に入社した会社が京セラだったことです。

私が入ったときにはそれほど大きな会社ではなかったので、かなり直接的に稲盛和夫さんと接する機会があったんです。

今の自分の仕事に対する姿勢のいちばん重要な部分は稲盛和夫さんに教えてもらったと思っています。


J:あまりにも有名な方ですね。稲盛さんって実際間近にいるとどういう方なんですか?


W:ある意味、本、そのままの人。

全く裏表がない。

本だけ読んで直接あったことのない人は、「偉そうにお説教を言う人」か「謙虚に丁寧に語る人」か、どっちかの両極端を想像すると思うのですが、実際は「とても謙虚に熱く語る方」。

すごく尊敬できる人。


在籍当時は多少反発もありましたが(笑)歳を取ると、あそこで教わったことは大事だったなーと思いますね。


J:そうやって、謙虚でいて人を強力に引っ張るって難しそうですが、人を熱くできる人の条件って何だとお考えですか?


W:実は僕、京セラのあと、日本電産に入ったんです。そこで永守重信さんに出会いました。

僕は経営企画にいたので非常に近いところにいて、ひんぱんにコミュニケーションする機会がありました。

とても熱い人でしたよ。


人を熱くできる人の条件は、まず、本人の熱意が本物かどうか、一緒に目指したいというゴールが本当にみんなに共感を得られるものかですね。

稲盛さんと永守さんとは、コミュニケーションのスタイルが違うように見えると思います。でも、とても熱いのに、ものすごく自分を律している、というところは共通していたと思います。


J:今、アメリカなどの欧米に目を向けると新しいマネジメントスタイルが台頭してきていますが、日本は今後、そういうマネジメントスタイルを取り入れて行くことが良いのでしょうか?どうお考えですか?


W:まず、日本は今までも欧米からいろんなマネジメントスタイルを輸入してきましたが、あれは本当に正しく輸入したのか?というのが僕の疑問です。

あの裏にある「哲学」とか、「人材はこのように扱うべき」とかいう根っこがきちんとしていないと、表面上の制度だけを輸入しても駄目だと思います。だからうまくいかないんだよね。

僕の知っている限り、成功した企業は日本の会社だろうが、欧米の会社だろうが、ベースの部分、大事にしているところは、そんなに違わないんだと思います。

それをどういう形で実行するかはその地域の文化に合わせる必要はあります。

カリフォルニアの企業でネクタイしろって言ったってそれは無理だし、人を役職で呼ぶなんてとんでもない。

そこは文化に合わせて変化するんだけど、根っこの部分は変わらないはず。


J:渡辺さんなりのマネジメント感を醸成されて来たなかで、なにか印象的な出来事はありましたか?


W:日立製作所の前に日立コンサルティングにいたんですが、僕が入社した頃にできた会社なんです。

会社としてはその分野を強化したかったので、コンサルティングをあまり勉強したことがない若者を体系的に育てなければならなかったんです。

だから、そのときにまさに育てながら成果を出すということを経験しました。

僕がやっていたのは、みんなで集まって徹底的に議論してから行動を起こす。そしてその結果をまた集まって徹底的に議論する。大学のゼミみたいな進め方をしていました。

だから僕の部署は「渡辺ゼミ」って言われてました。


J:なるほど。渡辺さんのマネジメントはどこかで学んでというよりも、ご自分で考えて出来上がってきたものなんですね。


W:根底には稲盛さんと永守さんの影響が染み付いているから、そこから考えることができたんだと思います。


趣味はクラッシックとワイン

J:渡辺さんはクラシック音楽とワインが趣味ということですが、音楽はいつから始められたんですか?


W:高校生の時にフルートを始めて、大学でファゴットに転向しました。

どちらもポジションが空いていたので始めたというのがその楽器を始めた理由なんだけど振り返ってみるとファゴットは気持ちいい楽器でしたね。何が気持ちいいって、目立たないのがいい。

時々ちょっとだけ存在感が出るけど、それ以外はほとんど目立たない(笑)


J:良いマネジャーみたいですね(笑)

ワインはどんなワインがお好きなんですが?


W:ワイン単体で飲むというより、楽しくごはんを食べるときに合うワインが好きですね。

高いワインは嫌いですね(笑)


J:最近おすすめのワインはありますか?


W:最近はコストコのハーディーズが気に入ってます。


J:へえ~。どんな特徴があるんですか?


W:安い(笑)


(一同爆笑。)


W:値段を知って飲むと、とんでもなく美味しい。

どんな食事にも合うんですよ。


辛い時こそ、気持ちを軽くする

J:座右の銘がありましたらうかがいたんですが。


W:最近はあまり意識してないんですが、昔はありました。

“Take it Easy”です。


J:理由もお聞かせいただけますか?


W:昔、とっても大変な仕事で大失敗になりそうだった時があったんですが、何人かに言われたんです。

「命までは取られることはないよ」と。

現実に、「命かけて仕事をします」と言っても、本当に命をかけるわけじゃないでしょ?

「命をかけます」と言っても人生の全部をかけるわけじゃない、一部のはず。

そういう気持ちって、仕事をするときに大事だと思うんです。

本当に命をかけたら逆に困るんだよ(笑)

だから、しんどいときに”Take it Easy”、一息つく。


J:良いですね。今の時代はそれが必要ですね。


W:もう少しその話しても良い?

人として生き延びる力とか、エネルギーをどんどんすり減らしていく会社って、良くない会社だと思うんだよ。

労働時間とか、仕事の難易度とかいう話ではなく、その働いている人が、職場だけではなく、地域や家族に属するひとつの人格として元気で生き続けるような環境を作ってあげられるのが、良いマネジャーだったり、良い会社だったりするんだと思う。

人が育つとか、成果を出せるようになるとかということも、「僕はこの人達と一緒に幸せになりたい」と思うようなことが必要なんだと思います。


共に育つ関係性を

J:いいお話をありがとうございます。

では、最後の質問になりますが、渡辺さんにとってジョイワークスとは一言で言うとどんな存在でしょう?


W:本当の意味で「一緒に」仕事ができる感じがあります。

大抵のコンサル会社は「一方的に提案したことをやる」、もしくは「頼まれたことをやる」という関係になりがちなんだけど、そうではなく、ジョイワークスは「次にはこんなことがしたい」、「こんなものがある」ということを良い感じで(笑)話をしてくれて、仕事を通じて一緒に育っていける存在だと思います。

僕らのチームもいろんなことを学んだし、おそらく、ジョイワークスも僕らを実験台にしていろいろと達成できたこともあるんだと思う(笑)


J:バレてますね(笑)


W:さっきのマネジメントの話でわかると思うんですが、こういう関係って僕、大好きなんです。

でも、さっきのマネジメントも実現するには実際むずかしいように、こういう関係の会社も少ないので、僕は本当にうれしいです。


J:ありがとうございます。


W:大事にしなければいけない原理原則って本当は少ないし、共通なんだと思います。


J:そうですね。今日は本当にありがとうございました。


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