目的の正しい理解へ向けて(その1)

目的の正しい理解や説明を阻害する第一の要因として「過度に抽象的な表現」をあげることができます。「抽象的」を越えて「情緒的」としか言いようのない説明を聞いたこともあります。「抽象的な表現」を避けて、具体的に語ることは簡単ではありません。理由はわかりませんが、私たちには抽象的な表現をカッコイイと思う、抽象的な表現をすると賢く見える、と感じる性癖があるようです。


ですから、マネージャーはカッコ良く見せたいとか、賢く見られたいという思いを捨てて(簡単でないことは、自分自身の経験でよくわかっています)具体的に、分かりやすく表現するように努力すべきだと思います。


「抽象的な表現」をチェックする簡単な方法として3つのマジックワード(抽象的でありどうにでも解釈できる、すごく意味がありそうなのによく考えるとわからなくなる、思考停止を招く、反論が難しい、単語や文章)の「種」を紹介します。

  • 〇〇力

  • △△化

  • 推進

の三つです。


自分の説明(表現)の中に、このいずれかの言葉があったら、表現が具体的ではないと考えて間違いないと思います。時々(実は、あまり少ないない)「〇〇力の△△化の推進」というような目的を見ることがありますが、私には「頑張ります」と言っているようにしか見えません。


抽象的な表現をチェックし、具体的な表現にしていく最も基本的な技法として「反証可能性の検証」があります。(上記のマジックワードが含まれる場合でも有効です)具体的なステップを以下に示します。


  1. 「〇〇が△△だ」という表現に対し、否定形の「〇〇が△△でない」の表現をつくります。

  2. 「〇〇が△△だ」と「〇〇が△△でない」を、どう区分するかを考えます。(最初の表現が事実かどうかを検証することが可能か、すなわち反証できる可能性がある表現であるかを考えます)

  3. 「〇〇が△△だ」と「〇〇が△△でない」の区分について、補足の説明なしには、区分することが難しい、もしくはチームメンバー間で判断が異なる可能性がある場合は、「反証可能性が不十分=まだまだ抽象的である」と考えられます。

  4. 「反証可能性が不十分=まだまだ抽象的である」な場合は、「〇〇が△△だ」の意味をよく考えて、より区分がしやすいであろう新たな表現「●●が▲▲だ」と「●●が▲▲でない」を作成し、再度検証します。以下の状態になるまで、これを繰り返します。

  5. 最終的に作成された「◎◎が◆◆だ」と「◎◎が◆◆でない」の区分について、補足の説明なしに、チームメンバーであれば誰でも同じように判断できるのであれば、十分に具体的であると考えられます。


これで抽象的な表現の修正の終了です。


以上の説明からお分かりいただけるように、目的の表現が抽象的なままだと、仕事の結果として、目的が達成されたかどうか、判断が容易ではないということになります。場合によっては、マネージャー(もしくは上位のマネージャー)にしか判断できない、ということになりかねません。この状況がチーム(部下)の達成感を損ねることは明らかだと思います。目的を抽象的なレベルのままチーム(部下)に仕事を進めさせることは、本リレーブログの冒頭で説明した「チームのモチベーションを高めるためのマネージャーの行動」と、「人材育成のためのマネージャーの行動」の基本からはずれた行動であると言って良いと思います。

面倒くさそうですが、「現状の理解」「課題の理解」「目的の理解」などを明瞭かつ正確に進めるうえで、非常に役立つ手法なので、ぜひ実践してみてください。


表現の分かりやすさや正しさを検証する手法としてCLR(Categories of Legitimate Reservation)があります。ここでは項目のみを紹介します。詳しい説明は、以下のURLを参照してください。


http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/0807/16/news142_3.html


*CLRの説明には(基本的な内容は同一ですが)いくつかの表現のバリエーションがあるようです。ここでは上記URLの著者であるゴールシステムコンサルティングの村上悟さんの表現に準拠して紹介します。


《第1段階の検討》……明瞭性の検討


(1)意味の明瞭性

  • 単語の意味が分かるか

  • 文の意味が分かるか

  • 因果関係ははっきりと理解できるか

《第2段階の検討》……存在の検討


(2)実体(事実)が存在するか

  • 完全な文章(主語+述語)になっているか 

  • 現実に存在しているか

(3)因果関係の存在

  • その原因は、実際にその結果を引き起こすか 

《第3段階の検討》……因果関係の検討


(4)原因の不十分

  • その原因だけで、その結果を引き起こせるか

  • 何か主要な原因が抜けていないか

  • その結果を引き起こすのに、ほかの原因が必要ではないか

(5)追加の原因

  • その結果を引き起こすほかの原因はないか

  • その原因を取り除けば、その結果は絶対に起きないか

(6)原因と結果の逆転

  • 原因と結果の関係が逆になっていないか

  • その原因は、結果の存在する理由・根拠になっているか

(7)予想される結果の存在

  • その原因は明白か、明白でないならば、その原因からほかの結果が予想できないか

  • その原因から必ず表れるほかの結果はないか

(8)同語反復/循環論理

  • 原因の正当化に結果が使われていないか

  • その結果のほかに、必ず表れる検証できる結果はないか

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