戦略人事に転換する⑤:日本の人事制度の特徴(その1)

かつての日本企業は、「長期的視野に立った経営」と「人間中心(尊重)の経営」のコンセプトのもとで経営しており、そこから日本的人事システムが形成されていきます。


日本の労使関係は、職能資格制度によって安定的に構造化され、 階層的平等化をつうじたブルーカラーのホワイトカラー的統合を意味します。

職能資格制度によって内部昇格・人間基準の仕組みが確立し、査定をテコに   ①能力開発意欲の向上→技能形成   ②能力活用意欲の向上→柔軟な働き方  といった機能関連をすべての従業員において達成するものでした。


労働組合からは、  ①ホワイトカラー(職員)とブルーカラー(工員)における身分制の打破   ②全従業員における自動的な昇級の保証   ③終身雇用の現実化  といった従業員の平等化要求がなされました。


それに対して経営は、自動昇給と終身雇用による労働コストの自動増大が前提となった以上、  ①資格制度に基づく定期昇給   ②人事考課の導入による人事処遇への競争インセンティブの組み込み   ③雇用調整が必要になった場合の配置転換ができるメカニズム  を実現することで、賃金総額を低位・安定的に管理しようとしました。


これらの結果から職能資格制度は、労使関係戦略をつうじて労使による妥協と納得の均衡点として成立しました。


また高度成長を支えた教育として「TWI」と「MTP」を挙げることができます。

両方とも進駐軍によってもたらされたもので、TWI・MTPとも人間尊重をベースにした教育プログラムです。

TWIのモジュールの一つであるTWI-JI(仕事の教え方)の基本精神は“できないのは教えていないから”であり、日本的MTPでは“権限と人格のバランスの必要性”がベースにありました。

これらの教育プログラムと職能資格制度の運用は、最高の相性であったといっても過言ではありません。


時代の変遷とともに日本企業の人事制度も変更を余儀なくされました。

社員の納得感が得られなくなり、基本原則の適用に限界が生じた時点で新しい基本原則に移行する形で、 日本企業の人事制度は下記のとおりの変遷をたどってきました。










参考文献:『日本型人事システムの再検討(同志社政策科学研究2002年)』樋口純平同志社大学准教授

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