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執筆者の写真田口光彦

ポストコロナ時代を見据えてマネジャーのあり方を考える②

更新日:2021年10月23日

※内容はコロナ禍直前に『企業と人材』に投稿した内容の一部を編集しています。


●プレイングマネジャーの限界


政府が音頭をとって始まった「働きかた改革」は、一定の成果をあげているようである。

しかし、『労働生産性の国際比較2019』(日本生産性本部)によると、日本の生産性は経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均を下回り、主要7カ国では最下位である。

日本の生産性は4年連続で改善されているが、むしろ海外との格差が広がっている。

ここからも今まで通りの働き方改革の限界は明らかである。


4年連続の生産性向上は、会社の方針に従ってマネジャーが行なった残業削減の結果であろう。

会社の方針だからといって、現場にただ“残業を減らせ”といった活動は、危険をはらんだマネジメントのように筆者には思える。

朝一番に大量のメールを処理し、緊急度の高い業務を行い、定常業務を完了させて、ようやく重要な業務に取り組む、そこにまた飛び込み仕事が入ってくる、このような仕事のやり方になっていないだろうか。

このやり方だと重要な仕事は、必ず残業に回ってしまう。


残業を削減したら、重要なことが先送りされ、明日のための仕事はいつになっても完遂しない。

重要な業務は、緊急性が低いため先送りすることは可能だ。

緊急度の高い仕事が優先され、重要度の高い仕事が先送りされれば、社員は達成感を味わえず、仕事に対する誇りも持てなくなってしまう。

そして、減らした残業の中には、社員が善意で行なっていた「+1」の仕事も入っているかもしれない。

顧客や仕事の特性を知り尽くしたスタッフが念のためにやっていた仕事が、最後の品質を担保していたかもしれない。

このような仕事が削減されることで、大きな品質問題が出ないことを祈るばかりだ。


また、思いつきやブレインストーミング的で行うムダの排除は、本質的な分析不足のため、有効なアイデアはすぐに枯渇してしまう。

ここからもプレイングマネジャーの限界が見えてくる。

このようなマネジメントを続けていては、海外との生産性の格差は開くばかりだ。


そして、「働きがいのある会社ランキング」で有名なGreat Place to Workの直近の調査では、社員の働きがいを改善した企業の割合が39%で、低下した企業の割合は54%となっており、仕事に対する誇りの醸成や職場コミュニケーションがうまくいっていないことが予想される。

これも自ら忙しく働き続けるプレイングマネジャーの限界を示す側面であろう。

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