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ポストコロナ時代を見据えてマネジャーのあり方を考える④

更新日:2021年10月23日

※内容はコロナ禍直前に『企業と人材』に投稿した内容を一部編集しています。


ある企業で実践した内容に沿って、マネジメント改革のあり方を考えてみたい。

もうすでに組織開発のコーナーでご紹介したとおり業務改善改革の基本に「3ム(ダラリ」」がある。

3ムとは「ムダ」「ムラ」「ムリ」であり、ダラリは思考の手順を表している。


マネジャーが、業務改革で最初に取り組むことは「ムダ」の排除である。

ムダとは、付加価値を生まない作業のことをいう。

ムダの排除で便利なツールが、ドワイド・D・アイゼンハワー・アメリカ第34代大統領が考案した『アイゼンハワー・マトリック』である。

このツールを使い、職場で簡単なワークショップを行うことをお勧めする。

業務を付箋紙に書き出し、4象限のどこ位置づけられるかをメンバーが自分で判断して貼っていく。

象限ごとの基本対策は図に示したとおりであるが、この中には、マネジャーとメンバーの重要度に対する認識の差が多々出てくる。

判断基準の擦り合わせが必要となり、マネジャーはメンバーが“判断した理由”を素直に受け止め、チームとしての判断基準を合わせていく絶好の機会となる。

第4領域こそがムダ排除の本命で、ここには「ハトイカ(排除・統合・入れ替え・簡素化)」[1] を適用する。

「ハトイカ」も3ムと同じように思考の手順である。

職場全体を重要度の高い仕事にシフトさせていくことは、マネジャーの責務である。

重要なことを確実に実現するからこそ、組織は新たな価値を産むことができる。

このような活動もマネジャーに余裕がなければできない。




















業務改善のターゲットは「ムラ」に移っていく。

ムラとは、仕事上で発生するバラツキをいい、マネジャーは仕事の標準化とメンバーのスキルアップ(トレーニング)に取り組む必要がある。

メンバーがマネジャーと同程度のスキルを持ち、同じ判断基準で仕事を行うことができれば、マネジャーは全面的に仕事を任すことができる。

このような状態にするためにもプレイングマネジャーから脱しなければできない。

マネジャーは、メンバー個々の成長段階を見極め、一人ひとりに向き合って関係の質を高め、1on1ミーティングなどを通じてメンバーの思考の質を高めていくことが求められる。

このようなマネジメント活動を通じて、メンバーの活躍力が向上し、仕事上の境界線が明確になり、職場でエンパワーメントが実現される。

それに標準化を徹底することで、仕事の生産性の向上が図られる。

マネジャーが、マネジメントの仕事をした結果だ。


マネジャーの更なるターゲットが「ムリ」である。

ムリは、いままでの考え方ややり方では実現できないことが対象となる。

マネジャーは、ビジネスプロセスの再設計(Business Process Re-engineering)、RPA(Robotic Process Automation)などのテクノロジーを駆使したプロセス改善に挑戦する。

仕事に内在化された価値基準の見直しも必要かもしれない。

このようなマネジメントを実現するには、従来型の組織運営やプロジェクト対応では間に合わない。


下図の左側のマネジメントでは、プレイングマネジャーがメンバーに仕事の指示をしながら、メンバーと一緒に業務遂行している状態を表している。

高いスキルが求められる業務では、一部のメンバーに業務が集中し、困難な状況をプロジェクトでなんとかやり切っても、特に優秀なメンバーには疲労感が蓄積される一方である。

多くの日本企業の実態ではないだろうか。

それに対して右側のマネジメントでは、マネジャーは定常業務を全てメンバーに任せ、メンバー一人ひとりをサポートする役割に徹する。

そして、マネジャー同士で「マネジメント・チーム」を結成し、マネジメント・ノウハウを共有するとともに、一人のマネジャーでは決して実現できないビジネスプロセスの再設計やテクノロジーの活用などといった大改革に挑む。

マネジャーが、ポートフォリ・マネジメントを実践するからこそ、飛躍的な生産性の向上が実現できるのだ。プレイングマネジャーである限り、このような時間と労力のかかる活動は難しいのではないだろうか。

そして、マネジャーとメンバーの関係の質も良好ならば、大きな改革であってもメンバーはマネジャーを信頼し、組織の変革に協力してくれるだろう。

このようなマネジメントを行っている海外のマネジャーと、日本のプレイングマネジャーの働き方の違いが、生産性の違いを生んでいるのだ。

メンバーのモチベーションとエンゲージメントを高め、ポートフォリオマネジメントを実践する、これこそが新しい時代のマネジャーの姿ではないだろうか。



[1] 「ECRSの原則」を職場で適用しやすいように言い換えたもの、Eliminate(排除)、Combine(結合)、Rearrange(代替)、Simplify(簡素化)の英語の頭文字をとったもの

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